時計塔の使者が幻想入り11
 



長いことお世話になっていた病院(永遠亭という病院ではないらしいが。)を後に、前回妹紅と戦っていたところに戻ってみた。



今見てみればこの場所はひどい有様になっていた。まるでダイナマイトで地面を抉ったかのように穴やら皹やらできて、道が道ではなくなっていた。


(…藤原妹紅も少なからず怪我をしているはず……少し様子を見に行くか。そんなことよりも、)


私は地と平行に手を上げ、パーの状態で前に出す。


ぱちっと手の平に電流が走ると、それは術の発動の合図。



『我、契約に従い』


ゴゴ、と、少し地面が揺れる。まるで小規模の地震のようだ。


『森の精よ、大地の痛み、今此処に鎮めよ』


目を閉じながら唱える姿は、熟練の魔術使いの面影を見せる。


『空間同化『復元』っ!』


バチンッと、大きな音が鳴り、稲妻のような光りが先ほどのへこんだ地形に向かって放たれていた。


しばらく光り続けて数十秒、光が収まるとそこにはへこみもなく、戦う前の地形になっていた。



「……ふぅ、こんな感じだな。やれやれ、ドクター(永琳を指す)にああ言われてはな、治さざるをえないな。」


一人ぼやき、妹紅の住まう家へととりあえず向かうことにした。


上空を飛んでいる人間がいることにも気付かずに。



「……なんだあいつ。変な技使ってたな。」 



~~~~~~~~~


コンコン。


よくこんな竹林の中に家を建てたものだ。外見から見ると本当に小さな家で、本当にここに二人住んでいるのかと疑ってしまうくらいだ。



そんな家のドアを丁寧にノックする。


ごそごそと音を立てながらもドアに近づく音が聞こえる。


「ほい、どな…た。」


ひょっこりドアから出てきたのはここに着てから二回も拳を交わっている藤原妹紅だった。


いきなりだったかもしれないが、意外な客に彼女自身呆けてしまっている。


「いきなりすまない、少々世間話をしたくてな。」


なれない笑顔を見せるものの妹紅はすぐにドアを閉めたしまった。


「……」

「悪いな、今日は帰ってくれ。」


相当嫌われたものだな。今度は片割れも狙われているとでも思っているのだろうか。


「今日は単純に話をしたくてな、どうにか中に入れてくれないだろうか。」

「何もしないんだったらなおさらパスだ。お前を中に入れる筋合いなどない。」

「ふむ、なら外ならかまわないだろう。外でもいいから会話がしたい。」

「………」


どうやらうまく言いくるめられたようだ。彼女がゆっくりと出てきた。


~~~~~~~~~



「え、それを言うためにわざわざここに?」


不意を衝かれたような目をする。


「当たり前だろう。こちらも手を出してしまった上、怪我をさせてしまった。相手の様態を窺うのは当然ではないのか?ましてや女性ならなおさらだ。」


「~~~っ」

彼女はやりにくそうに頭をポリポリとかいている。


「とりあえず、その事には感謝痛み入る。それに心配しなくてもいい。自分で言うのもなんだがこの身は不死の身体。心配する必要もないね。」


ふむ、と、気になるのが一点。


「ふむ、では何故あの病院…永遠亭に通っていたのだ?」


「そ、それは…」


ちらりと中の様子を窺う妹紅。


「……病人がいると見た。」


「……そうだ。」


いかにも分かりやすい反応だったため、思わず口走ってしまった。


「ふむ、すると、私を入れなかった理由も分かった。そしてその選択は間違いではなかった。」


「……?どういうことだ?」


むっ、と眉が一瞬鋭くなる。


「私の魔力は此処にいる魔法使いとは違った魔力を放っていてね、ひょっとすると反作用の症状が出てしまうかもしれない。それが弱っている人ならなおさらだ。」

「近づくだけでだめなのか?」


私は小さく頷く。


「………」

「……とりあえず、君が元気なのは分かったから安心だ。中の人の病状は分からんがお大事にとでも言ってくれ。」


「……あぁ、言っとくよ。悪かったな、こんな森深くまできて、今度来たときは茶でも淹れてやるから。」


あぁ、楽しみにしてるよ。と、小さく返事し、来た道を引き返すことに。



そのときだった。


「こーんなところにいたのか、探したぜ。」


上空から降りてきたのはエプロンとは言いがたく、ましてやメイドのような服装と言っても近くて遠いような気がする。


色で表すと完璧に「白黒」。これが私の今回のターゲット。


「……君は。」


「あたし?あたしは霧雨魔理沙!魔理沙って呼んでくれ。」


明るそうな性格はその笑顔で一発で悟ることができた。




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