時計台の使者が幻想入り 9
 



目が覚めたと同時に私は半身を起き上がらせた。


私は、あの戦いで彼女の爆発一つで気を失ってしまったのか。

何たる不覚、いや、調子が悪かったといった言い訳は自分をもっと侮辱させるだけだ。


私は現に彼女に「負けた」のだ。形がどうあれ、私は気を失わされたのだ。


そうかそうか、なるほどなるほどと一人で頷いていると、この部屋のドアが開くような音がした。


「わっ。」


人を珍しいものを見るような目で見るんじゃない。もっとも、自分の格好こそ奇妙だろう。


入ってきた人、いや、獣の類か。大きなウサギのような耳は頭に挿したように突き立ってる。


「し、ししょー!!」


そして慌てて振り返りこの部屋を後にする。そんな彼女の背後に尻尾らしきものはなかった。




――――――――




「詳しく聞かせてもらおうかしら。」



私はベッドの上で半身を起こしながら尋問らしいことをされていた。


相手は、先ほどのウサギ?の子とその上司と思わせる人、さらには昨晩戦ったあの八雲紫までいる。



「詳しくとは…一体何を。」


私はウサギの子から熱いお茶を受け取り、ズズズと啜る。さすが、やはり茶は熱くなければ。



「まぁ、一番聞きたいことは何故ここに来たのか、かしらね。」


紫はこの部屋に数少ない患者が座る席を背もたれに寄りかかりながら質問を繰り出してくる。



「む、それは……まぁ、言っても罪にはならないが、教会の中では話すことはタブーとされている。」



これは、しきたりというか、隠密部隊としての鉄則というか。


「何よう、霊夢のときは簡単に喋ってじゃない。」


そういえば、と思い出すリアクションをする。確かにそうだった。だがアレはあくまで人探しの上での質問であって任務をばらしたというわけではないのだが。



「……霧雨魔理沙を探しているんでしょう?」


知っていたのか。知っているのに私の口から言わせようとしたのか…。



「……まぁ。そうなるわけだが。」


もはや茶を啜るしかなかった。



「でも何故『魔理沙』だけなのかしら?魔法使いなら他にもいるでしょうに。」



ふむ、その話し方だと霧雨魔理沙以外にも魔法使いがいるような話し方だが。


すると紫が口を割った。


「よく考えて見なさい永琳、おそらくこの男は『人間である』魔理沙を連れたがっているのよ。人間じゃないアリスとパチュリーは無関係なのだわ。」


初めて聞く名前だ、この世界の中にもう二人魔法使いがいるとは。


「いや、大体はあっている。が、その分だとそのアリスとパチュリーと言う名の方は人間にとって無害なのだろう?ならば、そのお二人も連れて行かなければならない。」


魔術教会の中でのルールは魔法を扱うものはすべてサインを取らなくてはならない。例外はあるが、その例外もいずれは一度目を通さなくてはなるまい。



「ん~、そうなると、さらにあなたはここから出られなくなると思うわ。」


難しい顔をしているウサギっぽい子の横でデスクにひじを置き頬杖をかいている、先ほど紫に「えいりん」と呼ばれた人が苦い顔をしている。


「と、申すと。」


「ここの周りを囲んでいる『博麗大結界』。ここ越えたら貴方の元の時間、つまり『リアルタイム』が貴方達を襲うわ。」


ふむ、と私は頷く。


「さらにはあの結界を越えた上でその衝撃に耐えらなくてはいけない。時に誰かが『タイムバックドラフト』と言ってたわ。まぁ、わからない人は浦島太郎を参考にして頂戴。」


どちらも知らないが、話を進める。


「ふむ、結界はともかく、三人を連れ去るにはちょっと骨が折れそうだ。」


「連れ去れって言い方はちょっと…。って言うかちょっとどころではすまないわ。」


永琳はかなり詳しく説明して、私の身体では無理と判断しているようだが、様子だけで判断してはいけない。


「では、だ。私は何故ここに入れたのだろうか?もちろん、結界はあったぞ。」


「貴方本当に長年の魔術使いなの?入るときは簡単かもしれないけども、異世界から現実に戻るときには違う衝撃が来るわ。」


確かに彼女の説得には一理はある。確かに変えるときには違った衝撃、先ほど言った「タイムバックドラフト」が襲い掛かる。


それをどう回避するか、彼女はそこを気にしてたようだ。


それなら問題はない。


「永琳、と言ったな。確かにそちらの言い分は正しい。」


私はふぅ、と一つため息を出すと、ゆっくりと立ち上がる。

私の身長に驚いたのか、ウサギは口を開いたまま私を見ていた。



「だが私の随一の能力、『同調』の力があればその問題は解決する。」


「同調……?」




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