姉ヶ崎恵です。
「……はぁ」
本日何度目の溜め息になるだろうか。
僕はフラフラと視線を教室の真ん中あたりへ向ける。
そこには今日転入したばかりで、クラスメートから質問攻めにあっている一人の少女がいた。
「……はぁ」
彼女の名前は姉ヶ崎恵。
つまり姉さんだ。
「まさか双子のお姉さんがいたとはな、守」
ニヤニヤと笑いながら泰明が話しかけてくる。
ああそうか、学園では双子設定なんだっけ。
……まあ僕も、さっきの姉さんの自己紹介で知ったんだけど。
「双子ねぇ」
「なに疲れてんだよ。まあ身内がいきなり転入してきたら大変かも知れないけどさ」
ちなみに姉さんは、今までは家庭の事情で母親の実家に住んでいたことになっていた。
「でもメグのやつはお姉さん知ってたんだな、ちょっとビックリしたよ」
「ああ、それは……」
「昨日買い物で偶然、ね」
スッと恵が現れる。
そして一瞬こっちに目配せした。
買い物で口裏を合わせようってことか。
「まだ挨拶してなかったわね。おはよ、二人とも」
「うぃっす」
「おはよう」
自然な流れでメグは僕の背後に来ると、後ろから腕を回し、身体を預けてくる。
「重いよメグ」
「軽い、よね」
メグの声には迫力があった。
「しっかしかなりの美人さんだよな、お前のお姉さん」
「そうか?」
「見慣れてるからわからなくなってるんだよお前は」
泰明は腕組みをしながら頷いている。
「守は私のほうが好みなのよね」
「それはな……く、苦しいよメグ」
メグに首を絞められる。
意外と力は強い。
「はっはっは、そうか、守にはメグがいたな」
なにを笑ってるんだ泰明は。
などと下らないやり取りをしているうちに、一限目の予鈴が鳴っていた。
「まったく、無茶苦茶なことするよ姉さんは」
「あら、そうかしら?」
帰り道、僕達は二人で歩いていた。
「だいたいなんだよ、双子って」
「一応二卵性双生児ってことにしたから大丈夫よ」
「そういう問題じゃないよ!」
「なにが嫌なのかしら、お姉ちゃんと学園に通えるのに」
言って、姉さんは腕を絡ませてくる。
「は、離してよ」
「ダーメ」
ムギュムギュと、姉さんの豊かな胸が腕に当たる。
「ふふ、やっぱり守はおっきい方が好きなのね?」
「なにが?」
「恵ちゃんはそんなに大きくないわよ、いいの?」
「だからなにが!?」
「なんでもない」
「なんなんだよもう」
「そうだ、お買い物行きましょ。今日もお姉ちゃんが守の好きなの作ってあげるわ」
言いながらニコニコと無邪気な笑いを見せる姉さん。
僕はそんな姉さんに引っ張られながら、渋々と全部を許してしまうのだった。
「恵ちゃんを見ているときの守の目。あれはやっぱり……」
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