夏-2 君が主で駄犬が俺で
犬になることを命ぜられた次の日が日曜日だった上に、生憎にも外が昨日とは一転した土砂降りの雨だったせいで、俺は会長と由香利先輩に思う存分使われた。
会長たちの命令は例をあげるときりがないが、こっちは自分の部屋で、劇の内容を考えているのに、手を伸ばせば届くくらいの場所のリモコンを取れだとか、
女物の下着を手洗いで洗濯しろだとか、フジケン先輩の携帯に十回ワン切り電話をかけろだとか、そんな調子である。
当然、これより酷い命令も多々あったし、俺はその都度「ワン」と言って従わざるを得ないのだった。
由香利先輩も由香利先輩で、
「にゃはははは!!」
と快活に笑いながら純真な悪意を振りかざしていたし。
そして、月曜日。
生徒会室でも、俺は会長から「私は犬です」と書かれた看板を首からかけられ、命令されていた。
「あー、肩がこったなー」
会長はそう言って俺の方をちらりと見る。
「……今行きます」
「ん、返事が違うだろう?」
「……ワン」
「よしよし、よく言えたなー」
ムツゴロウさんよろしく喉をわしゃわしゃされる。
もちろん俺に拒否権はない。
俺が会長の肩を揉み始めてから少しして、由香利先輩まで、
「肩がこったにゃー」
とか言い出した。
少し意地悪な笑みを浮かべて。
「誰か揉んでくれないかにゃぁ?」
「……ワン」
俺が渋々向かおうとすると、
「待て、犬、まだ私のマッサージは終わってないだろ?」
会長に止められる。
しかし、由香利先輩は、
「ワンちゃんまだかなぁ?」
俺を催促する。
まさに二重拘束状態だ。
しばらくして、そんな困った俺を見兼ねてか、奈穂が
「わ、私がやりま」
そう言う終わる前に、黙って本を読んでいたフジケン先輩が立ち上がって、
「宮崎さん、俺がやるよ」
ぽつりと言った。
「……にゃぁ!? で、で、で、でもフジケン!! 悪いよっ」
由香利先輩はまさかの伏兵登場に狼狽しているけれど特に気にした様子もなく肩に手をおくフジケン先輩。意外なカップリングだ。でもなんか、似合ってる。
「……どう?」
「き、気持ちいい……にゃぁ」
「良かった」
そしてなんとなく微妙な、漫画なら花が浮かんでいそうな雰囲気に取り残されいたたまれない俺と奈穂と会長の三人は、結集して作戦(?)会議。
「ど、どうします!? この雰囲気!!」
「な、奈穂、落ち着け、素数を数えるんだ!! 1、2、3、5…」
「会長、それ最初から間違ってます」
「と…とりあえず…」
「一時撤退」
「しますか」
なおとかいちょうとだけんは逃げ出した!!!
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